「奥様の野菜畑・・・ 3」

晴耕雨読と鼻歌を歌っている奥様は気楽なものです。
 
・・畑の呟き・・                    
おいおい・・いいのかい、こんな狭い畑にこんなにたくさん植えてしまって
これだから素人はいやだよなァ
植えればいいって言うものではないんだぞ
この奥さんはずいぶんと欲張りだなァ
まあ素人だからしょうがないやね。 
どれだけ期待に答えられるかわからないけど、私なりに協力してあげよう   
ダメダ!・だめだよ、種を蒔いてそのままにしていたら、電線の上にハトが
竹やぶの中でカラスがほ〜ら (カア〜 カア〜)と鳴いてるぞ
奥さんが帰ったらすぐに種を食べにやってくるぞ
ほ〜ら、見たこっちゃない、ハトが豆食ってるぞォ
 
梅雨も明けたというのに、奥様は何をしているのかなァ?
せっかく立派に育ったキューリは地べたに這ってしまってるし
ナスビは水不足で葉っぱはレースの様に穴があいてしまったなァ
農薬を使わないのなら害虫を取りに来てほしいよなァ
枝豆にはカメ虫がいっぱい着いているし、トマトは伸び放題
もっと丈夫な支柱をしないと・・・・・あ〜〜まったく、イライラするなァ
 
・・ 奥様 ・・
 
毎日暑い日が続くので、畑の土は白く乾燥し、野菜がSOSを発信しているので、
奥様は畑の水やりに精を出しています。
畑の回りには水が無いのです。それぞれの畑には大きなポリバケツがいくつも
置いてあり、雨水を貯めているのです。
バケツいっぱいの水を両手にかかえてフラフラ,ヨロヨロしながら家から畑まで
何往復も水運びをしています。
畑仕事をされている人に
「こんにちは 暑いですねぇ 雨が欲しいですよねぇ」
すると一言、「なあ〜に いつか 雨は降るさァ」
 
水やりは、か弱い奥様には辛い仕事でした。早くもギブアップ、白旗を振ります。
8月になると奥様は畑に出るのがイヤになってしまったのです。
アリのようにコツコツと畑には行かず、キリギリスのように涼しい所で遊んで
ばかりの奥様です。
その結果、野菜は枯れてしまって草ボウボウの恥ずかしくて逃げ出したい畑と
なってしまいました。
「秋野菜から、また頑張るわよ!」と、毎年この調子の気楽な奥様でしたが、
他の畑の野菜と比べると出来栄えが劣るので、反省をして考えました。
 
この道何十年と言われるベテランのお百姓さんの生徒になって見ようと思い
83歳のオバアチャン先生を見つけ、奥様は「農業塾」と称して週一回塾長の
オバアチャンの畑に通うことにしたのです。
お喋り好きな塾長はいろんな事を教えて下さいます。
「畑仕事で、身体を壊しちゃつまらんけぇのぉ ボチボチしんさいよ」
「毎日畑を覗くと、いくらでも仕事はあるもんじゃ 」
「百姓は 牛のヨダレみたいなもんじゃけぇのぉ 」
 
百姓になりたい奥様だけど、百姓は簡単にはなれないのです。
身体と心とやる気が思うように一致しなくて、欲がありすぎて百姓一筋に精進
するのが難しい現実ですけど、溢れでる汗を流し、時たま吹く心地よい風を
身体に感じると「あ〜 私は生きているのだ」と実感する幸せな一時です。
奥様の野菜畑はボチボチと頑張って続けて行きます。
 
                      終り
 
       己斐(^o^)ゞ・チェリー    
 
           
レース状の葉になったナスビ      カラスに食べられたトウモロコシ
 
        
  真っ赤な完熟トマト          容姿は悪いけど新鮮キュウリ